オフィスリーシングとは?メリットや注意点をご紹介

不動産賃貸業において、空室リスクを抱え続けることはオーナーにとって大きな課題です。特にオフィスやテナントビルの運営は、単に建物を所有しているだけでは収益を安定させることはできず、常に入居率を意識した経営判断が求められます。しかし、実際に高い入居率を継続的に維持することは容易ではなく、マーケットの変動や企業の働き方の多様化も影響を与えています。

そのため、空室対策には幅広いニーズに対応できる「経験」と「実績」が不可欠です。入居者が決まったら終わりではなく、次のリーシング(客付け)につなげる戦略的な視点も求められます。そこで注目されるのが、オフィスビルや商業施設における安定的かつ質の高いテナント誘致を実現する「リーシング」という仕組みです。

リーシングとは?

リーシングとは「客付け業務」のことを指し、不動産オーナーから委託を受けて、テナントの誘致や賃貸借契約に関わる一連のサポートを行う業務です。対象は主に商業用不動産やオフィスビルであり、住宅仲介の単発的な取引とは異なり、継続的な資産運営の観点から重要な役割を担います。

仲介業者との違いは、ただ入居者を見つけて契約することにとどまらない点です。リーシングはオーナーの経営方針や物件の特性を踏まえ、柔軟な提案力と市場知識を駆使して、より長期的かつ安定的な収益につながるテナント誘致を実現します。オーナーの要望に合わせてターゲットを設定し、収益性や将来的な資産価値を見据えた戦略的なマネジメントが行えるのが特徴です。

リーシングの必要性・メリット

テナント誘致は、単なる営業活動ではなく「物件の価値を最大化する経営戦略」とも言えます。例えば、複数の空室があるビルはそれだけで「人気がない」という印象を与え、内覧時の第一印象を損なうリスクがあります。こうした負の連鎖を断ち切るためにも、リーシング活動は必須です。

リーシングを活用することで、次のようなメリットが得られます。

  • ターゲットを絞った効率的な誘致
    綿密な市場調査に基づき、優良なテナント層だけにアプローチすることで、効率的に契約へつなげることができます。
  • 賃料未払い・トラブルリスクの低減
    信頼性の高いテナントを選定するため、契約後のトラブルが減り、オーナーの安心感につながります。
  • 不況期・好況期どちらでも有効
    景気が低迷している時期は早期空室解消に、景気が良い時期にはより高額な賃料を提示できるテナントへの入れ替えに活用でき、いずれの市況でもオーナーにとって有利に働きます。

さらに、ビルの特性が原因で空室が長期化する場合もあります。例えば、天井が高いことで開放感がある反面、空調コストが高くなる物件は敬遠されがちです。こうしたマイナス要因を踏まえた提案を行い、改善点を示すこともリーシング会社の役割です。

リーシングマネジメント業務

リーシングは、単なる「空室を埋める作業」ではなく、戦略的かつ段階的に進められるプロセスです。

  1. オーナー要望のヒアリング
    賃料設定やターゲット業種、長期的な運営方針を明確にします。
  2. 市場リサーチとコンセプト設計
    競合物件やエリア特性を分析し、物件のポジショニングを固めます。
  3. ターゲットの選定と募集計画
    想定テナント層を絞り込み、募集条件・プロモーション戦略を策定します。
  4. 営業活動と交渉
    内覧案内や条件交渉を行い、双方の合意形成を支援します。
  5. 契約・開業サポート
    契約締結から開業準備までを伴走し、スムーズな入居を実現します。

こうした流れを経ることで、単なる入居決定にとどまらず、中長期的な資産価値向上につながります。

リーシングの注意点と改善点

事業用のテナント物件は間取りや設備などがテナントにとって、とても使いやすく設計されていて、最新の設備が設置されている場合があります。それ故に、賃料を高く設定せざる得なくなります。

しかし、時期や物件、立地によっては中々客付けができない場合もあります。このような事態にならないためには、建築プランを考えている段階でテナント探しを行い、リーシングやテナントをよく知る人たちの意見を聞き工夫することが必要になります。

また、賃貸マンションの下層階のテナントの場合、一般賃貸として貸すよりもテナントとして貸した方が高い賃料が取れるのではないかと言う理由だけでは、周辺環境からくるニーズに合っていなければ、新築でも借り手が見つからずリーシングに苦労するケースが多いようです。

借り手側はテナント計画において採算に乗らなければ、入居を決めることはありません。自分たちが開業するテナントに来てくれるお客さんや取引先の目線で物件を探しています。その為、きちんとニーズを把握してテナント物件にするかどうかの判断が必要です。

そして、周辺環境と合っていない業種のテナントを許可してしまった場合には近隣からのクレームにつながるなど大変なケースになる可能性も考えられるので要注意です。

リーシング会社の選び方

成功するリーシングのカギは、パートナーとなるリーシング会社の選定にあります。大手のリーシング会社は広いネットワークと豊富な実績を持ち、優良テナントへのアプローチ力に優れています。一方で、中小規模でも特定エリアや業種に特化したリーシング会社は、きめ細かい対応力とスピード感を発揮できる強みがあります。

オーナーとしては複数の候補を比較検討し、自身の物件特性や経営方針に最も合致するリーシング会社を選ぶことが重要です。特にオフィスビル、商業施設、セットアップオフィスなど、それぞれの得意分野を見極めて依頼することが、早期客付けと安定運営につながります。

まとめ

現代の働き方は、リモートワークやフレキシブルオフィス、レンタルスペースの活用など、かつてないほど多様化しています。そうした背景の中で、従来のようにオーナーが独力でテナント誘致を行うことは難しくなっています。

リーシングは、単なる空室解消の手段にとどまらず、物件価値の最大化と中長期的な収益安定を実現する重要な経営戦略です。オーナーとして資産を守り育てていくためには、信頼できるリーシングパートナーと共に計画的なマネジメントを進めることが欠かせません。

今後も空室対策の選択肢として、リーシングマネジメントの活用はますます重要になっていくでしょう。

この記事を書いた人

福田勇人

オフィス仲介歴20年以上、オフィス不動産に関する専門家です。2002年に新卒でオフィス仲介会社に入社し、オフィス物件の仲介に携わりました。その後、2012年にスリースターに入社し、仲介営業としての経験を積んでまいりました。現在は広報やマーケティングを担当し、オフィス不動産における情報を提供し、お客様に最適なソリューションを提案する役割を果たしています。