最新オフィス設計のトレンド 「ABW」とは?オランダ発の新しい働き方

日本でも働き方改革によって、固定席で仕事をするオフィススタイルから「フリーアドレス」へ変更する企業も増えてきています。

しかし最近では、欧米の企業が相次いで「フリーアドレス」より自由な働き方ができる「ABW」(Activity Based Working:アクティビティ・ベースド・ワーキング)というオフィススタイルを導入し、注目を集めています。

「ABW」について新しい働き方、生産性向上につながるワークスタイルとして興味を持たれている経営者の方も多いのではないでしょうか。

今回は「ABWとは何なのか?」など導入におけるポイントを解説いたします。

目次

「ABW」とは?

「ABW」、つまりActivity-Based Working(アクティビティベースドワーキング)は、1990年代初頭にオランダで始まりました。当時の働き方やオフィスの環境が変化の兆しを見せていた中、従業員がより柔軟に、かつ効果的に作業を行える環境を提供するための新しいアプローチとして注目されるようになりました。

この働き方のコンセプトは、従業員が行う業務活動に基づいて最適な作業場所やツールを選択することを重視しています。一例として、静かに集中して作業を行いたい時は静寂なエリアで、コラボレーションが必要な時は開放的なスペースで作業を行うなど、従業員がその時々のタスクに合わせて作業環境を選べるのが特徴です。

ABWの考え方は、ヨーロッパを中心に徐々に広がりを見せ、特に北欧諸国での導入例が増加しました。これは北欧の企業文化や労働環境が、従業員の自律性やワークライフバランスを重視する傾向が強いため、ABWと相性が良かったと言われています。

21世紀に入ると、テクノロジーの進化、特にモバイルデバイスやクラウドコンピューティングの普及に伴い、ABWは世界中の多くの先進国で導入されるようになりました。アメリカ、オーストラリア、アジアの一部の都市などでも、この新しい働き方のアプローチが評価され、多くの企業がABWを導入しています。

現在の市場動向としては、COVID-19の影響を受けてリモートワークが一層普及する中、オフィスの役割や機能が再評価されています。このため、ABWの考え方が、新たなオフィスのデザインや運用の基準として更に重要視されるようになってきています。

「ABW」と「フリーアドレス」との違い

「フリーアドレス」は固定席を設けずに、オフィスの座席を自由に利用できるワークスタイルです。

オープンなオフィスの机の中からどこを選ぶか、つまり誰と隣り合わせの席を選ぶかに終始してしまいがちです。

「ABW」は個人作業用、チーム作業用、ミーティング用など、業務内容に合わせて異なるスペースが用意され、「誰の隣に座るか」ではなく、「この活動に適している空間はどこか」という判断軸で仕事場所を選ぶことができます。

「ABW」の要素には(1)「物理的な環境」、(2)IT環境などの「テクノロジー」、(3)社員の「行動」という3つの軸があります。

一方「フリーアドレス」はこの中の「物理的な環境」の側面しか見ていないといえます。

「ABW」は望ましい結果を出すために、ITなどのテクノロジーを使ったり、社員の行動を変えたりすることで「いつでもどこでも」働けるように、働き方を変えるのが目的になっています。

また「フリーアドレス」は、確かに執務をするデスクを選ぶことはできますが、基本的には同じオフィスエリアのデスクでほとんどの仕事をします。

一方「ABW」は、個々の活動がベースになってくるので、同じエリアのデスクに限らず、さまざまな場所で働くことを選択できるのです。

「ABW」導入のメリット

(1)生産性の向上

固定席だと集中して作業をしている最中に同僚からの相談、電話や周囲の声などで集中力が途切れがちになることがあります。

「ABW」のワークスタイルであれば自由にスペースが選べますので、集中したい時には静かな空間で作業でき、作業にかかる時間が減り、生産性向上が図れます。

(2)社員の満足度の向上

好きな場所を選んで働けるという自由が社員に与えられ、テレワークや在宅勤務などと併用されれば、オフィス以外の場所も選択できますので、通勤時間の短縮など社員のワークライフバランスが向上します。

(3)コスト削減

オフィス面積の削減や、組織変更の都度発生するレイアウト変更費用の削減につながります。

また、どこでも仕事ができるように資料のデジタル化を進めるため、ペーパーレスにつながり、コピー用紙や印刷コスト削減にもつながります。

(4)優秀な人材の獲得

自由な働き方を取り入れることで、社外に向けたPR効果も期待できます。

自由な働き方を積極的に推進する取り組みが他社との差別化につながり、優秀な人材が集まりやすくなります。

「ABW」導入のデメリット

(1)人材の管理が難しい

働く場所や時間を自由に選べるため、どこに誰がいるのか分からなくなってしまうこともあります。

また、管理職や同僚とのコミュニケーションも取りづらくなるケースが予想されます。

(2)会社への帰属意識低下の可能性

チーム単位の活動時間や職場への滞在時間が短くなることで、チームや会社への帰属意識低下の可能性があります。

(3)体制や整備構築の必要性がある

「ABW」を導入するにあたり、まずは社内を整備する必要があります。

どんなスペースが必要なのか、どの程度の規模が必要なのかなど、適切なスペースを構築して組み合わせなくてはなりません。

また、社員に「ABW」導入の必要性とメリットを浸透させなくてはならず、何のために「ABW」を導入し、それによって何がどう変わるのか、そのためには個々に何が求められているのかなどを浸透させる必要があります。

「ABW」導入のポイント

(1)業務内容が適しているかどうかを考える

たとえば総務などは各部署との連絡業務も多く、あちこちに移動されるよりも、自席にいてもらった方が周りの人の仕事を進めやすいでしょう。

逆に、営業職のように自席にいることが少ない仕事や、企画業務など頭さえ使えれば自席にいる必要のない仕事は「ABW」に向いています。

どのような業務内容で、本当に「ABW」を導入するメリットがあるのかということの検討が必要です。

(2)働き方を調査する

「ABW」導入によりコスト削減できるのは、席の利用率などを調べて、必要最低限のスペースを用意すれば済むからです。

したがって、座席の使用時間を調査し、それに合わせて必要なスペースを洗い出していかなければなりません。

同時に『現在のオフィスへの不満』『無駄なスペースはないか』『取り入れた方が良い設備』などについて、実際に働く社員の声をよく聞くということが大切です。

(3)上司と部下の信頼関係

目の前に部下が座っていて、何をしているか見えている状態ではなくなるので、上司と部下の信頼関係というものがこれまで以上に大事になってきます。

上司は自分が『監視』しなくても部下から成果物が上がってくることを信じて、自分は自分の仕事をするだけでよい信頼関係の構築が必要です。

(4)仕事の成果を正しく評価する仕組み

仕事の途中経過がわからなくなるので、上がってきた成果物を正しく評価する仕組みが必要です。

(5)最適なレイアウトを考える

実際に導入が決まったら、「ABW」の実施に必要な個室スペースや作業スペース、ミーティングスペースなどの設置を考える必要があります。

使いやすさやコミュニケーションのしやすさも考慮し、レイアウトを決めていきましょう。

また、仕事中も移動できるように、Wi-Fi通信やノートパソコン、スマートフォンなどのモバイル機器も準備する必要があります。

まとめ

「ABW」は、社員が自由に働く『時間』『空間』を選べるワークスタイルです。

オフィス内に限らず、集中ブースやカフェ、自宅など、仕事に最適な環境を選ぶことができるため「フリーアドレス」からさらに進化した働き方といえます。

また「ABW」を導入するためには、オフィスの現状を把握し、本当に導入が可能なのか、メリットがあるのかを検討することが重要です。

「ABW」がうまく機能すれば、仕事の効率が上がり、社員の満足度もアップします。

また、オフィス空間を効率的に利用でき、コスト削減にもつながります。

各々の社員がこれまでのように、与えられた仕事を指示されたようにやるのではなく「ABW」では自分で考え、自分で計画を立て仕事をこなしていく自律性が求められています。

自分で仕事を進めていける優良な社員にとっては、非常に働きやすいワークスタイルです。

より良い人材を集めるためにも、最小限の時間とスペースで会社の業績を上げていけるように「ABW」導入をご検討されてはいかがでしょうか。

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