賃貸借契約書とはどんな内容なのか
賃貸人と賃借人の間で締結されるのが”賃貸借契約書”です。日本では、借地借家法という法律があり、賃貸人と比べて立場が弱い賃借人を保護するような内容になっています。賃貸借契約書では、借地借家法に関する内容や、より細かい決め事を定めています。日常生活ではあまり使わないような言葉や表現もありますが、しっかりと確認して、内容が不明な点は理解できるまで確認しておきましょう。
賃貸借契約の契約形態について
オフィスの賃貸借契約で使用される契約形態は主に以下の3つです。
普通建物賃貸借契約(普通借家契約)
1年間以上の契約期間が設定され、期間満了の際は更新していくタイプの契約形態です。
オフィスでは2年、もしくは3年間で設定されることが多く、小規模ビルでは更新の際に更新料や事務手数料が発生する場合があります。
途中解約について
基本的に、貸主からは解約ができません。そのため、借主のほうが強い立場にある契約形態と言われています。契約の更新の際も貸主は基本的に拒絶できません。貸主からの解約には正当事由(建物老朽化による取り壊し、立退料の負担など)が必要になります。※貸主からの契約解除は可能です。
賃料改定について
普通借家契約では、賃料改定の申し出が可能です。近隣相場が変動している際など、賃貸人・賃借人の双方が申し出ることが可能です。賃貸借契約書で「賃貸人は賃料を改定できる」となっている場合、「甲乙協議の上、賃料を改定できる」というふうに文言を変更してもらうよう交渉するのがおすすめです。
共益費(管理費)の改定について:共益費は、「賃貸人は共益費を改定できる」となっているのが一般的です。建物全体の管理費用に関わることですので、賃借人が改定を拒否するのは難しいかと思われます。
定期借家契約(定期建物賃貸借契約)
期間の定めはなく、1年未満の契約も可能です。期間満了の際、契約の”更新”はありません。賃貸借を続ける場合は新たな賃貸借契約を締結する(再契約)必要があります。再契約するタイミングでは、新たな賃貸条件を設定します。賃料は周辺相場にあわせて設定するのが一般的ですので、賃料は改定されるのが一般的です。賃料が値上がりするか、値下げできるかは、そのときの市況になってみないとわかりません。ちなみに、賃貸条件が合意しない場合、再契約は行われず、賃借人は退去することになりますので、パワーバランスは同等程度と言われています。
途中解約について
定期借家契約では、賃貸人、賃借人ともに途中解約はできません。ただ、特約条項で途中解約を可能としているケースもあります。特に、ベンチャー企業をターゲットにしている中規模ビルでは「定期借家契約ですが、途中解約できます」としているビルが大半です。
賃料改定について
契約期間中の賃料改定はありません。契約期間中の賃料は固定されますので、賃貸人としては、賃料収入の予測が立てやすくなるメリットがあります。また、特約でフリーレント期間(賃料の支払い免除期間)がある場合、契約年数で平均して会計処理することが可能です。

施設利用契約(サービス利用契約)
レンタルオフィスやサービスオフィスで使用される契約形態です。ホテルやスポーツジムと同じような形態です。
借地借家法の範囲ではありませんので、賃借権などは発生しません。契約期間の縛りなどもなく、自由度が高い契約形態となっています。
賃貸借契約を締結する際に発生する費用
預託金
敷金や保証金を預け入れます。賃料滞納の際の担保として預けるというのが一般的です。最近は、保証会社を利用することで、賃料滞納のリスクをなくし、預託金を下げるケースが増えています。保証会社に支払う保証委託料は月額の支払い費用の1ヵ月分というのが一般的です。
仲介手数料
賃料の1ヵ月分が上限です。
賃貸借契約書で確認すべき条文
賃貸借契約書に書かれている条文はすべて重要なのですが、ここではポイントをご紹介します。
契約書は3回以上読み込んで、不明な用語や言い回しは弁護士や仲介業者に確認しましょう。
使用目的
想定している使用目的と相違がないか確認しましょう。
更新・再契約
期間満了で契約を終了したい場合、つまり更新しない場合はいつまでに届け出る必要があるかを確認します。期間満了以外で解約すると違約金が発生するケースがあります。
敷金・保証金
敷金の返還時期について確認しましょう。”契約終了日から3か月以内に返還する”というのが一般的です。あまりにも長い場合は相談してみましょう。
賃料の改定
賃料の改定ができるか否か、双方から申し出ができるかを確認しましょう。また、”協議のうえで”という文言が入っているかも大切です。
中途解約・契約期間開始前解約
中途解約ができるかどうか。解約予告の期間。解約違約金の額を確認しましょう。
フリーレントがついている契約の場合、当初の契約期間中に解約すると、免除された金額が違約金になるのが一般的です。更新後はフリーレントの違約金は無くなるのが一般的です。
また、契約を締結したものの、契約期間が始まるまでの間にやむを得ずキャンセルする場合もあります。その際の違約金の額も確認しておきましょう。
貸主からの契約解除
賃料を滞納した場合や、禁止事項に違反した場合に解除されてしまうケースがあります。内容を確認しておきましょう。
賃料以外に発生する費用
物件によって異なりますが、賃料や共益費以外にも、電気代、水道使用料、駐車場使用料、町内会費、貸室内の清掃費用などがかかるケースがあります。
原状変更について
入居後の内装工事に関する規定が書かれています。内装工事業者の指定について書かれていることがありますので、指定の有無を確認しましょう。
禁止事項
オフィスを使用するうえで、禁止されている内容を確認しましょう。
ペットの持ち込みや、宿泊などは禁止されていることが一般的です。
損害賠償・違約金の予定額
遅延損害金や損害賠償、違約金などの項目を確認おきましょう。
特約事項
大手デベロッパーの物件では、契約書の条文自体は変更せずに、特約で対応するのが一般的です。フリーレントの内容や、解約禁止期間、連帯保証人の削除などの内容が記載されます。
館内規則
館内規則がある場合は、こちらも内容を確認しましょう。
工事が実施可能な時間帯や、引っ越しの際の時間帯などが書かれています。
館内に店舗が入居している場合は特に注意が必要です。夜間工事しかできない場合、工事期間も長くなり、費用が高くなる傾向があります。