再生可能エネルギーを導入している賃貸オフィスビル

目次

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーとは、風力や太陽光、地熱、バイオマスなどを利用した発電で作られた電力のことをいいます。大きな特徴としては、発電の際にCO2を排出しないことです。石炭や石油、天然ガスなどの資源を利用した発電はCO2を排出してしまいます。

再生可能エネルギーを導入するビルが増えている背景

2050年カーボンニュートラル宣言

2020年10月に菅総理が「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。そして、2030年度の目標として46%削減が設定されました。いかにしてCO2の排出を削減していくか。業務部門のCO2排出量削減の手段としては、大きく「省エネ」と「再エネ」があり、これらを組み合わせて2030年目標やカーボンニュートラルを目指していくことになります。

環境省によると、オフィスビルの環境評価の1つである【ZEB】に登録されているオーナーを調査したところ、テナントビルよりも自社ビルのほうが圧倒的に高かったそうです。もちろん、企業の本社はテナントビルに入居していることの方が多いため、オフィスビルの脱炭素化は喫緊の課題となりました。

そこで、環境省は「リーディングテナント行動方針」を策定し、賛同企業を募っています。行動方針は、大きく「入居先選定時の行動方針」と「入居後の行動方針」の2つで構成されています。

具体的には、入居先選定時、入居後、それぞれで

①省エネ(エネルギー性能の向上、エネルギー消費量の削減)

②再生可能エネルギーの活用

③安全性、健康・快適性、知的生産性の確保

を理念として掲げています。

テナントの認知、需要も高まっているため、大手デベロッパーをはじめ、ファンド物件などでも再生可能エネルギーを導入するビルが増え始めました。導入しているビルは、新築のオフィスビルだけでなく、既存のオフィスビルでも事例が増えています。

環境省:「リーディングテナント行動方針」

スコープ2:再生可能エネルギーによる発電は、CO2排出係数は0となる。

国際機関「GHGプロトコルイニシアチブ」が策定した基準でサプライチェーン排出量というものがあります。

その中の、Scope2 ( 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)の目標設定をしている企業に、再生可能エネルギーを導入しているビルはおすすめです。

企業のCO2排出量を計算するには、電力会社のCO2排出係数を利用して計算します。CO2排出係数とは、電力会社が電力をつくる際に発生したCO2排出量を指し示す数値です。

この排出係数に関しまして、風力や太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーによる発電については、CO2 の排出がないため、「CO2排出係数=0(ゼロ)」となります。

再生可能エネルギーを100%導入しているビルに入居すると、「トラッキング付き非化石証書」が発行されるなど、自社で再エネ電力を利用していると認められます。

非化石証書とは

経済産業省が公認した証書で、再生可能エネルギーなどの環境的な価値を証書にしたものです。

従来は、電力事業者のみが非化石証書を購入することができました。 しかし、2021年11月からは需要家が直接「非化石証書」を市場で購入することができるようになっています。

トラッキング付き非化石証書の導入事例

東京ミッドタウン八重洲

東京ミッドタウン八重洲では、使用電力をグリーン化する「グリーン電力提供サービス」を導入しています。テナント企業のニーズに応じて、三井不動産が保有する太陽光発電所の環境価値を「トラッキング付非化石証書」として付加し、グリーン電力として供給が可能。本サービスをご利用される企業の使用電力は、国際基準であるRE100に適合した電気として認定されます。

RE100とは

企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブです。日本では60社以上の企業が加盟しています。

大手デベロッパーなどの再生可能エネルギー導入状況

三井不動産

2020 年 12 月に 東京電力エナジーパートナー(東電 EP )との間で包括協定を締結 し、2021年4月より、首都圏オフィスビルを対象に東電 EP から電力供給を受けているテナント等に対し、 使用電力に卒 FIT 住宅用太陽光発電等の環境価値が付いた再生可能エネルギーを供給 するサービスを展開。

2021年5月のプレスリリースで以下のような発表をしています。

  • 当社が首都圏で所有するすべての施設(オフィスビル、ホテル、商業施設、物流施設、賃貸住宅)で2030年度までに使用電力のグリーン化を推進。
  • 当社を代表する東京ミッドタウンおよび日本橋エリアのミクストユース型基幹ビルなど25棟で、先行的に2022年度末までに使用電力をグリーン化。
  • 専用部でも入居テナント各社のグリーン化計画に対応した「グリーン電力提供サービス」を4月より開始。三井不動産の様々なグリーン電力化の仕組みを活用し、オフィスビルなどで使用する電力をトラッキング付非化石証書の使用によって実質的に再生可能エネルギーとして提供するサービス。国際基準であるRE100等に対応しており、テナントや共同事業オーナーはそれぞれの経営計画や段階的なグリーン化計画などに応じ、導入時期や導入割合などを柔軟に設計できるのが特徴。

2022年度末までに使用電力のグリーン化を推進する先行導入ビル

東京ミッドタウン、東京ミッドタウン日比谷、東京ミッドタウン八重洲、三井本館、日本橋三井タワー、日本橋一丁目三井ビルディング(コレド日本橋)、日本橋室町三井タワー(コレド室町テラス)、室町東三井ビルディング(コレド室町1)、室町古河三井ビルディング(コレド室町2)、室町ちばぎん三井ビルディング(コレド室町3)、グラントウキョウノースタワー、三井住友銀行本店ビルディング、霞が関ビルディング、豊洲ベイサイドクロスタワーなど計25棟

三菱地所

2021年度より、丸の内エリア等の計 19 棟において、 生グリーン電力とトラッキング付 FIT 非化石証書を併用することで、使用電力の全量を再生可能エネルギーで供給 。 2022 年度には、東京都内、横浜市内に所有するすべてのオフィスビルと商業施設の電力を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えることを発表。

以下は2022年1月17日のプレスリリースより抜粋

◆2021年度中に切替済の物件 (19棟)

丸の内ビル、新丸の内ビル、丸の内パークビル、三菱UFJ信託銀行本店ビル、丸の内永楽ビル、 東京ビル、丸の内オアゾA街区、三菱ビル、丸の内二丁目ビル、丸の内仲通りビル、 大手町ビル、大手町パークビル、大手門タワー・ENEOSビル、 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ、丸の内二重橋ビル、新東京ビル、国際ビル、 新国際ビル、横浜ランドマークタワー

◆2021年度中に新たに切替済・予定の物件 (7棟)

常盤橋タワー、大手町フィナンシャルシティ ノースタワー・サウスタワー、日比谷国際ビル、 三菱ケミカル日本橋ビル、新宿イーストサイドスクエア、新宿フロントタワー、 マークイズみなとみらい

◆2022年度中に切替予定物件 (20棟)

新大手町ビル、新日石ビル、新青山ビル、赤坂パークビル、山王パークタワー、 山王グランドビル、神田橋パークビル、二番町ガーデン、渋谷クロスタワー、 リンクスクエア新宿、三田国際ビル、豊洲フォレシア、豊洲フロント、みずほリースビル、 西新橋スクエア、アクアシティお台場、南砂町ショッピングセンターSUNAMO、 ポンテポルタ千住、エムズクロス表参道、東久留米ショッピングセンタークルネ

東急不動産

東急不動産は再生可能エネルギーの導入に積極的なデベロッパーの1社です。2014年から再⽣可能エネルギー事業「ReENE(リエネ)」を開始。全国で太陽光、風力、バイオマス発電を運営しています。2021 年4月に本社事業所およびオフィスビル・商業施設等の計 17 施設で使用する電力について、同社所有の発電所からの再生可能エネルギーとトラッキング付非 FIT 非化石証書を組み合わせて、再生可能エネルギー利用に切り替えています 。

住友不動産

グリーン電力の導入プランを3つ用意しているのが特徴です。テナントのニーズにあわせて最適な導入方法を支援してくれます。

2021年9月に東京電力エナジーパートナーと「脱炭素リードプロジェクト協定」を締結。2021年11月のプレスリリースにて以下のサービスを発表しています。

・運営する賃貸オフィスビルにおいて、テナント企業ごとのニーズに合わせた最適なグリーン電力プランを提案する体制を構築。2021年11月16日(火)より入居テナントのうち、1,000社超を対象に『住友不動産のグリーン電力プラン』の提案を開始。

・ビル単位でなくテナント単位で導入可能なグリーン電力プランをご用意

・『住友不動産のグリーン電力プラン』では、一般的な非化石証書を用いた実質グリーン電力だけでなく、テナント企業が所有する発電所由来の実質グリーン電力や、新設発電所由来の追加性を有する生グリーン電力など、当社がこれまでテナント企業や東京電力エナジーパートナー株式会社とともに開発してきた複数のグリーン電力導入手法の中から、テナント企業ごとに最適なグリーン電力プランを選択できる点に特色があり、テナント企業の多様化する脱炭素ニーズに広く対応してまいります

森ビル

2019年8月より、六本木ヒルズ森タワーにて、 六本木エネルギーサービスが非化石価値取引市場より非化石証書を調達し、森ビルを介してテナントに証書を提供 。オーナーによるテナントへの再生可能エネルギー供給としては国内初の取り組みを開始しています。

さらに、2020年からは虎ノ門ヒルズビジネスタワーにおいても同様の取り組みを開始しています。

現在建設中の「虎ノ門・麻布台プロジェクト」および「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」では、竣工時より街全体に「RE100」に対応する再生可能エネルギーの電力を100%供給予定。入居テナントへトラッキング情報を記載した再エネ証拠書類を森ビル独自の「エネルギーWEBシステム」を通じて自動的に頒布するシステムも導入予定です。

日鉄興和不動産

同社が本社を構える赤坂インターシティAIRをはじめとしたオフィスビル10棟で使用する電力を、2022年度に再生可能エネルギー由来の電力へ切り替えることを発表。導入する再エネ電力は、「トラッキング付非化石証書」等を活用したものであり、「RE100」にも対応可能なものとなっています。また、共用部のみならずテナント専用部も含めた電力会社からの調達電力全てを切り替え対象とすることから、オフィスや商業などの施設用途を問わず、対象ビルの入居企業は自社で再エネ電力を利用していると認められることになります。

・切り替え予定の代表的なビル

赤坂インターシティAIR、赤坂インターシティ、品川インターシティ、浜離宮インターシティ、名古屋インターシティ

日本生命

2022年7月に、首都圏、近畿で所有する賃貸オフィスビル19棟の全電力を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えました。

・導入済み物件

日本生命丸の内ビル、日本生命丸の内ガーデンタワー、NHK名古屋放送センタービル、日本生命浜松町クレアタワー、靖国九段南ビル、日本生命日本橋ビル、日本生命銀座ビル、日本生命赤坂ビル、神楽坂1丁目ビル、ニッセイ五反田駅前ビル、日本生命五反田イーストビル、ニッセイ新大塚ビル、ニッセイ大塚駅前ビル、日本生命武蔵野ビル、日本生命横浜西口ビル、日本生命千葉駅前ビル、ニッセイ新大阪ビル、ニッセイ新大阪南口ビル、日本生命梅田第二ビル、ニッセイ三宮ビル、日本生命姫路白銀町ビル、日本生命淀屋橋ビル

野村不動産

2022年2月1日のプレスリリースより

2023年度迄に、野村不動産が保有する全ての賃貸資産の消費電力を再エネ化

野村不動産が保有する日本国内全ての賃貸資産において、野村不動産が調達する電力を、入居テナント分も含め2023年度迄に再エネの導入を完了する計画。
その実現にあたっては、野村不動産が開発する物流施設「Landport(ランドポート)」に設置された太陽光発電の環境価値を活用するとともに、外部の「トラッキング付非化石証書」等の調達も実施することで、昨今高まりつつあるテナント企業の再エネニーズに対応します。

(仮)芝浦一丁目プロジェクトでは街区全体でのCO₂排出量実質ゼロを実現

芝浦一丁目プロジェクト

都市再生特区の目標を上回るCO₂の排出量の削減を達成するとともに、物流施設「Landport」に設置された太陽光発電等と、「カーボンニュートラル都市ガス」の導入により、街区全体でのCO₂排出量実質ゼロを実現します。

安田不動産

東京エリアにて運用・管理中のビルにおいて使用する電力を、再生可能エネルギー由来の電力に切替え。導入する再エネ電力は、東京電力エナジーパートナー株式会社、および株式会社エネットが提供するトラッキング付非化石証書を活用した「RE100」対応の電力であるため、各施設の入居者は、実質再エネ由来100%の環境価値のついた再エネ電力を利用できるようになります。※一部のビルでは共用部のみ切り替え。

・再生可能エネルギー導入ビル

ワテラス、マークライト虎ノ門、錦町トラッドスクエア、三洋安田ビル、竹橋安田ビル、竹橋スクエア、神田橋安田ビル、安田シーケンスタワー、名古路ビル本館、NTF竹橋ビル、竹橋3-3ビル、名鉄不動産竹橋ビル、安田グリーンパーク、コンフォール安田ビル、神田ポートビル、昭栄第2錦町ビル、HAMACHO HOTEL&APARTMENTS、スプラウト日本橋浜町、青山安田ビル、お茶の水ユニオンビル、ナーベルお茶の水、市ヶ谷安田ビル、渋谷KIビル

まとめ

2050年カーボンニュートラルへ向けて、賃貸オフィスビルでも再生可能エネルギーの導入の動きが広がっています。以前、再生可能エネルギーは自社ビルでの活用が方が進んでいるとの調査もありましたが、テナントビルも盛り返してきましたね。テナントとして入居していても、再エネ電力を利用できるようになるのは魅力的だと思います。

再生可能エネルギーを導入しているビル、環境評価を得ているビルなど、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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