本社・本店の移転登記をする方法|手続きの流れと不動産仲介会社だからこそ伝えたい注意点

企業にとってオフィスの移転は、ただの“引っ越し”ではありません。新しい働き方への転換や成長フェーズへの対応など、経営戦略上の重要な転機になることも多い一方で、忘れてはならないのが本社・本店の移転登記です。

本記事では、企業が本社を移転する際に必要な「本店移転登記」の具体的な方法から、オフィス不動産仲介会社としての視点を踏まえた実践的なアドバイスまでを詳しく解説します。

目次

そもそも「本店移転登記」とは?

会社法上、法人の本店所在地が変更となる場合は、法務局への登記申請が義務付けられています。これが「本店移転登記」です。登記上の本店所在地は、法人の身分証のようなものであり、登記を怠ると過料(罰金)が科されることもあります。

登記は税務署・社会保険・銀行口座など、あらゆる対外的な手続きのベースとなる情報であり、正確であることが求められます。

同一管轄内と管轄外で手続きが異なる

同じ法務局の管轄内での移転

例えば「渋谷区神南1丁目」から「渋谷区神南2丁目」など、同じ市区町村内での移転でも、法務局の管轄区域が変わらないケースでは、比較的簡易な登記手続きで済みます。

必要書類の提出先も1カ所で済み、登記事項の再申請も不要です。

法務局の管轄外への移転

一方、渋谷区から港区へ移転する場合など、異なる管轄に移る場合は少々複雑です。

  • 旧法務局と新法務局それぞれに申請が必要
  • 「定款の本店所在地」の変更が発生するため株主総会決議が必要
  • 設立時と同様にすべての登記事項を再度提出(OCR別紙または電子データ)

オフィス不動産仲介会社としては、移転先を探す際に「管轄の変更が発生するかどうか」も視野に入れて提案を行っています。管轄外への移転は、物件選びの自由度は上がる反面、事務手続きやコスト面の負担が増える点に注意が必要です。

登記に必要な書類

登記には以下のような書類が必要になります。

書類名内容
株主総会議事録(定款変更時)本店移転を決定した議事録
取締役会議事録または取締役決定書移転先住所や移転日を決定
登記申請書法務局に提出する正式な書類
OCR申請用紙登記事項を記載(または電子申請)
委任状代理人が申請する場合に必要

登記内容や企業規模によって追加書類が必要となることもあります。

本店移転登記の費用

移転に伴う登記には以下のような費用がかかります。

  • 同一管轄内の移転:6万円前後
  • 管轄外への移転:10万円以上

これは登録免許税・郵送費・書類作成費などを含めたおおよその相場です。司法書士などの専門家に依頼した場合は、さらに報酬が加算されます。

弊社では移転にともなうコスト見積もりの中に、登記関連費用も含めたトータルコーディネートを行っており、「思わぬコスト増」を防ぐご提案が可能です。

実際の登記の流れ

STEP
オフィスの契約・移転日決定

この時点で移転登記の流れが始まります。物件契約や鍵渡し日が「実質的な移転日」となるため、登記日を決定する基準になります。

STEP
株主総会・取締役会での決議

管轄外への移転は「定款変更」が必要なため、株主総会を開きます。その後、取締役会で「具体的な移転日と住所」を決議します。

※この「取締役会で決めた日」が登記上の本店移転日となります。申請日や引越完了日とは異なるため、注意しましょう。

STEP
法務局へ申請

登記は移転日から2週間以内に行う必要があります。過ぎると過料が科される可能性がありますが、実務上は多少の猶予が認められるケースもあります。しかし、原則として速やかな対応が求められます。

オフィス不動産仲介会社だからこそ伝えたい、物件選びと登記の連動

本店移転登記は「登記上の住所」が確定していないと手続きができません。そのため、オフィス選定・契約から登記までのスケジューリングが極めて重要です。

▼ 注意点①:表記ミス

「ビル名」や「号室」などの表記方法には注意が必要です。登記用の正式な住所は、登記簿・契約書・管理会社で記載が異なる場合があるため、慎重に確認を。

▼ 注意点②:移転日は“取締役会決定日”

実際の入居日や引っ越し日ではなく、「本店移転日=取締役会で決議された日」となることを認識しておきましょう。

移転に伴うその他の注意点

  • 住所表記のルール:都道府県名の省略、正式な地番での表記が必要。
  • 類似商号のチェック:誤認されやすい社名は後のトラブルになりかねません。
  • 税務署・社会保険事務所などへの届出も並行して行う必要があります。

登記は専門家に任せるのも一手

社内に登記手続きを正しく行える人材がいない場合、無理に自社対応せず、司法書士などの専門家に依頼するのも現実的な選択です。

特に以下に該当する場合は、外部委託が望ましいでしょう。

  • 定款変更が発生する
  • 手続きの期限がタイト
  • 会社設立時から専門家に依頼している
  • 管轄外への移転で二重申請が必要

弊社では、司法書士との連携体制が整っており、オフィス契約から登記申請までのスムーズなワンストップ対応が可能です。

まとめ|スムーズな移転には「物件選び × 登記準備」の連携が不可欠

本店移転登記は、オフィス移転において避けては通れない重要なプロセスです。

特に注意したいのは以下の3点です。

  • 物件契約と登記スケジュールの連携
  • 管轄の違いによる手続き・費用の変化
  • 表記ルールや移転日の定義の理解

登記の正確さは企業の信用にも関わります。物件選びの段階から登記までを見据えた計画を立てることで、移転プロジェクト全体を成功へ導くことができます。

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