働きやすい快適なオフィス環境づくりを実現するうえで、ワークスペースだけでなくトイレ環境も重要なポイントです。
オフィスの移転や社内改装を検討する際に、実際に業務を行うワークスペース以外に関してはあまり深く考えない方が多く、オフィス設備の中でもトイレは意外に見落としがちなポイントです。
しかし、オフィスのトイレというのは、仕事の合間にリフレッシュできるスペースとしてとても重要な役割を担っており、社員のモチベーションをも左右するのです。
ここでは、オフィスのトイレの重要性と、トイレを快適な環境にするにはどのような点に着目すべきなのかについてご紹介いたします。
トイレが仕事のモチベーションを左右する
(1)精神面のリチャージ
仕事のモチベーションに影響する場所として、7割近くのワーカーが「トイレ」と答えている調査結果が出ています。カフェテリアや休憩室などよりも、多くのワーカーが精神面のリチャージの場所として「トイレ」を利用していることがうかがえます。
トイレは用を足すという目的や化粧直し、歯磨きで利用するほか、会社において数少ない他者とのコミュニケーションを完全にシャットアウトできる空間であり、特に20代・30代の若年層はトイレを気分転換の場所として使っているようです。
(2)女性社員が男性社員よりもトイレへの関心が高い
一般的に、男性と比べると女性のほうがきれい好きな傾向にあります。そして、実際に社員にオフィスの快適性に関するアンケートを取ると、多くの女性からトイレについて不満の声が上がりやすいことがわかっています。女性社員にとって、トイレというのはとても重要な場所で、女性用のトイレは「化粧室」とも呼び、近年では当たり前のように、洗面台とは別にパウダースペースが設けられていたりします。
※オフィスのトイレをどのようなトイレにするのかを検討する際には、男性目線だけでなく、
女性目線での意見を十分に考慮して決めていく必要があるといえます。
女性社員の中には、「男女共用のトイレは利用したくないから会社に行きたくない」「和式のトイレが苦痛だから会社を辞めたい」という社員もいるほどです。
理想的なオフィスのトイレとは?
(1)清潔
小まめに掃除され、清潔に保たれていることが大切です。不潔なトイレは見た目だけでなく、悪臭などの問題も引き起こします。
また衛生的なトイレを実現するためには、最初から清潔な状態を保ちやすい素材やデザインを選ぶことも大事です。便器だけでなく、洗面台や鏡、壁、扉などにどのような素材を使うかが掃除のしやすさに直結します。専門の清掃員を置かず、社員自らが掃除をしなければならない場合であれば、特に掃除しやすいことも重要です。
(2)トイレの個数が適切
実は「事務所衛生基準規則」では最低限満たすべきトイレの数が決められていて、男女で必要な個室トイレの数が異なります。男性用の大便所は男性60人につき1個以上、小便所の数は男性30人につき1個以上と定めているのに対し、女性用便所の数は女性20人ごとに1個以上であることと定めています。
社員数に対してトイレの数が少ないと、なかなか空かずにストレスになったり、休憩時間に行っても使えなかったりして不便ですし、無駄な待ち時間が発生することは、利用者の満足度に影響するだけでなく、業務の効率性にも影響を及ぼしてしまいます。
(3)男女別であること
「事務所衛生基準規則」でも、まず前提として男女でトイレを分けることとしています。
男女共用トイレはお互いとても気を遣うものです。特に女性は化粧直しなどの問題もあるため、男女共用トイレを使うことに抵抗がありますので、トイレは男女別々に用意したいところです。
(4)音が外に漏れない工夫
トイレの音を気にするという人は少なくありません。流水音が流れるシステムを設置するなどの工夫が必要です。
(5)トイレの位置
ワークスペース内にトイレを設置すると、落ち着いて用を足せないという人もいます。プライバシーを守るためにも、トイレはワークスペースの外に設置することが望ましいでしょう。
また、ワークスペースとの位置関係についても十分考慮することが必要です。
遠すぎると行きづらく、トイレ休憩に時間がかかってしまいますし、極端に周囲に人の出入りが少ないような場所は安全とはいえません。逆に、ワークスペースに近すぎるとプライバシーが守れません。
理想的なレイアウトとしては、ワークスペースのどの出入り口からも行きやすい場所に設置することです。
トイレのレイアウトを重視したオフィス選び
一般的なオフィスビルを賃貸契約する場合、基本的な設備は変更できないことが多く、トイレも例外ではありません。新規開業や移転で新しくオフィスを選ぶ際には、ワークスペースだけでなく、トイレのレイアウトを重視した物件選びをすることが重要です。トイレスペースも必ず見学し、「男女別になっているか」「老朽化していないか」「ワークスペースからの距離は適切か」などについてしっかりとチェックを行いましょう。
また、オフィスのトイレは社員だけが利用するものではなく、来客が利用することもあります。
誰が利用しても好印象を抱いてもらえるように、様々な視点から検討していくことが大切です。
まとめ
オフィスではさまざまな人が働いており、他人と仕事を行ううえでは気を使ったり、ストレスを感じたりする場合もあります。社員にとってトイレは、就業中でも自分の意志で行くタイミングを決められ、なおかつひとりきりでリラックスできる貴重な場所です。たとえ、数分でも快適なトイレでくつろぐことができればリフレッシュになり、業務効率アップも期待できます。
また、オフィスの善し悪しを判断する条件として「トイレ」を重視している人は実は少なく、働く前の学生においてもトイレ環境が重視されるデータもあり、学生が求めるオフィスの設備はという問いに対し、ダントツ1位で「きれいなトイレ」が65%を占めています。
以上のように実際に企業で働く人にとっても、これから働く学生においてもオフィスのトイレ環境を見直し、重視することは、非常に大切なポイントといえます。
見落としがちなトイレ環境にこだわるとこは、人材流出を防ぐ意味でも、新たな人材確保のためにも有効で、来客からの評価アップにもつながるのです。