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いま使っているオフィスをそのまま退去するのが居抜き退去
一般的に、賃貸借契約書の【明渡し】の条文には「契約期間内に原状回復をして明け渡す」という内容が記載されています。しかし、コロナ禍で解約が大量に発生していることもあり、貸主が居抜きでの退去を認めるケースが増えています。居抜きで退去することができると、原状回復工事費用を削減することができるため、大きなコストメリットが期待できます。
貸主が居抜き退去を認める理由
・入居して間もない企業の解約が増えている。
コロナ禍以前、企業の移転頻度は”5年から10年に1回程度”でした。ところが、コロナ禍でテレワークが普及したため、”入居してまだ1年だけど、オフィスを使わなくなったので解約します”というような事例が増えました。当然、内装の状態は新しく、原状回復で壊してしまうのはもったいない物件が増えました。
また、新規のテナントが内覧した際も”このままの状態で借りれませんか”という相談も増えてきたというのもあります。次のテナントとしては、内装工事の費用や、工事期間を削減できるので、居抜きで借りることは大きなメリットがあります。
・引き合い、内覧件数が増える
”居抜きでの引渡し相談可”ということで募集すると、物件の内覧件数が増加します。空室が多い現在のオフィス市況では、テナント誘致のために、貸主は賃料を下げたり、フリーレントを付与したりと、条件を緩和する必要があります。しかし、「居抜き、内装付き」というのはテナントにとってメリットが大きいため、内覧件数が増加します。また、「居抜きで借りられること」を優先条件として探している企業も多く、検討エリア外であっても内覧、検討するケースが多いのも居抜き物件の特徴です。
居抜き退去の3つの基本ポイント
1.居抜きでの退去には貸主の承諾が必要です。
貸主や管理会社の承諾を得ずに居抜きでの募集を行うことはトラブルの要因となる可能性があります。承諾を得てから募集するようにしましょう。
2.原状回復義務は後継テナントに承継する
受付や会議室などの造作を後継テナントに譲渡します。什器類も譲渡するケースもあります。譲渡額金額は無償とするケースがほとんどです。
3.後継テナントが見つからない場合は原状回復工事が必要です
原状回復工事の発注期限までが居抜きでの募集期間となります。後継テナントが見つかった場合でも室内やエアコンなどのクリーニングは必要です。
居抜きで募集できる期間は?
前述の通り、後継テナントが見つからない場合は原状回復工事が必要となります。そのため、居抜きで募集できる期間は、貸主の承諾を得た時点から、原状回復工事の発注期限までとされるのが一般的です。
居抜きで退去する際の確認事項と用意するもの
居抜きで退去するにあたり、あらかじめ確認しておくことと、用意する資料をまとめます。図面などの資料があると、後継テナントが入居する際やレイアウト変更する際にとても助かります。また、原状回復について貸主と認識を擦り合わせすることも大切です。
1.現ビルの解約条件
中途解約禁止期間の有無、定期借家契約の場合は期間満了日を確認しましょう。期間満了日まで解約できないケースがあります。
2.現状のレイアウト図面
現状のレイアウト図面や照明スイッチの配線図などを用意しましょう。
3.原状回復基準、仕様書
賃貸借契約書の添付されているケースが多いです。
4.原状回復工事の見積書
なるべく早めに貸主・管理会社へ見積もりを依頼しましょう。見積もり額が後継テナントの検討材料になります。
5.入居してから施工した内容がわかる工事図面など
内装、電気、排煙、防災などの図面があればご用意ください。空調の移設、増設等も図面があることが望ましいです。
6.残置する什器類のリスト
レイアウト図面や資産管理台帳をもとに作成するケースが多いです。なるべく早めにリストアップすることをおすすめします。ギリギリになると後継テナントとトラブルになるリスクが上がってしまいます。
後継テナントが見つからない場合はどうなる?
残念ですが、原状回復工事をしなければなりません。
一般的に、原状回復工事は貸主の指定業者で行うことが契約書に記載されています。もし、指定業者から提示された見積もりが高額だった場合はご相談ください。適性かどうか、工事費用を査定いたします。
移転退去マニュアルはこちらからダウンロードできます
